「不動産投資の収支シミュレーションは信頼できる?」
「業者の提示した数字を鵜呑みにして大丈夫?」
不動産投資を始める前に業者から提示された収支シミュレーションに対して、このような疑問を抱く医師も少なくないでしょう。
収支シミュレーションを行うことで、毎月の家賃収入やキャッシュフロー、想定される売却価格など、その物件の投資価値を視覚化することができます。
一方で、より正確に収支シミュレーションを行うためには、金利上昇リスクや空室リスク、家賃の変動など、さまざまなリスクを含める必要があります。
しかし、不動産業者の提示する収支シミュレーションが必ずしもこれらのリスクを想定した上で作成されたものとは限らないため、注意が必要です。
そこでこの記事では、不動産投資における収支シミュレーションの信用性や、医師が確認すべき数字と注意点を解説します。
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不動産投資の収支シミュレーションとは
不動産投資の収支シミュレーションとは、その物件の家賃収入や空室率、ローン返済額、管理費・修繕積立金などから実質利回りやキャッシュフローを計算し、将来的にどれだけの収益性が見込めるかを予測することです。
不動産投資は比較的長期で運用することが多いため、その間にさまざまなリスクやトラブルが起こることを想定しておく必要があります。
甘く見積もった収支シミュレーションに期待して不動産投資を始めてしまうと、当初の想定と異なる赤字や損失を許容できず、後悔してしまう可能性もあります。
そのため、購入前にさまざまなリスクを想定して複数回シミュレーションを行うことが肝要です。
不動産投資の収支シミュレーションでわかること
不動産投資の収支シミュレーションでは、主に下記の5つのことを推定できます。
- 物件の収益性
- 金利上昇や空室増加などに対するリスク許容度
- 売却タイミングの検討
- 融資・返済計画の立案
- 節税効果
物件の収益性
不動産投資の収支シミュレーションでは、物件の収益性を測ることができます。
収益性とは投資した不動産がどれだけ効率よく利益を生み出すかの度合いであり、特に下記の2つは収益性を評価する上で重要な指標です。
- 実質利回り:(年間家賃収入-年間経費)÷(物件価格+購入時諸費用)× 100
- キャッシュフロー:年間家賃収入-(年間経費+年間ローン返済額+税金)
どちらも実際に入ってくる家賃収入と実際に支払う経費から算出されるため、これらの指標を用いることで、物件そのものの収益性や、ローン返済を含めた実際のキャッシュフローを把握できます。
また、当然キャッシュフローは黒字である方が健全ですが、実質利回りに関しては必ずしも高ければ高いほど良いというわけではありません。
例えば、購入時点での管理費・修繕積立金が相場より低く設定されていれば、実質利回りは高くなりますが、購入後に大幅に値上げされる可能性もあります。
周辺の物件と比較して明らかに収益性が高い場合は、なぜそうなっているかまで含めて評価することが重要です。
金利上昇や空室増加などに対するリスク許容度
金利上昇や空室増加などに対するリスク許容度を把握することができる点も収支シミュレーションのメリットです。
不動産投資は比較的長期間の運用になるため、その間に金利上昇や空室率上昇、管理費や修繕費の高騰など、さまざまな要因によってキャッシュフローや実質利回りが悪化する可能性があります。
そこで、例えば金利が1%上がった場合や空室期間が年間で1ヶ月増えた場合のキャッシュフローをシミュレーションすることで、これらのリスクをどこまで許容できるか事前に想定できます。
金利上昇や空室増加は、医師で金銭的に余裕がある場合であっても経済的・心理的な負担となる可能性があるため、事前に数字だけでも知っておくことが重要です。
事前にさまざまなリスクとその影響を把握しておくことは、投資で大きな失敗を避けるために有用であるため、さまざまな設定でシミュレーションを行うと良いでしょう。
売却タイミングの検討
収支シミュレーションを行うことで、売却タイミングを検討することができます。
建物は一般的に築年数の経過とともに建物部分の価値が低下しますが、不動産価格は立地や需給、周辺環境、金利などさまざまな要因によって変動します。
一方で、得られた家賃収入からローンを返済していくため、長期で保有すればローン残債は売却価格の低下よりも早いスピードで減っていくことが多いです。(※返済方法や築年数、所有期間にもよります。)
そのため、適用金利や返済方法、支払うべき税金や各種手数料、地域における空室率、周辺相場の下落などを想定してシミュレーションを行うことで、何年後にどの程度の価格で売却できる可能性があるか、また売却後にどの程度の資金が残るかを想定できます。
あくまでシミュレーションであるため、現実的にその通り進むとは限りませんが、購入時点からある程度の出口戦略を考えておくことは投資判断において非常に重要です。
融資・返済計画の立案
収支シミュレーションを行うことで、安全な融資・返済計画を立案できます。
毎月のキャッシュフローやローン返済額がどれだけ経済的に負担になるのか事前にシミュレーションしておくことで、ローン返済が困難になるリスクを抑えることや、精神的ストレスの軽減につながる可能性があります。
安全な融資・返済計画を立案するためには主に下記のような情報が必要です。
- 適用金利や返済期間
- 借入金額や頭金の有無
- 毎月の家賃収入とローン返済額
- 管理費・修繕積立金などの諸経費
- 想定される空室率
これらの情報からシミュレーションを行うことで、適正な頭金の金額や借入期間などを事前に把握することができます。
節税効果
収支シミュレーションを行うことで、その物件のもつ節税効果を事前に知ることができます。
不動産投資による節税は、不動産所得の赤字が生じた場合に、一定の要件のもとで給与所得などと損益通算することで、課税所得が減少し、所得税・住民税の負担軽減につながる場合があります。
特に医師は給与所得の所得税率が高い傾向にあるため、不動産所得の赤字を損益通算することで節税効果を得やすい可能性があります。
ここでの赤字を事前に算出するには、主に下記のような情報が必要です。
- 想定される家賃収入
- 借入金利息
- 減価償却費
- 各種手数料(仲介手数料など)
- 各種税金(固定資産税・不動産取得税など)
- 保険料(火災保険料・地震保険料など)
- 管理費・修繕積立金など
これらの情報から会計上の赤字を概算することで、どの程度の課税所得の減少が見込まれるかを概算できます。
不動産投資の収支シミュレーションは信用できる?注意点とは?
ここまで不動産投資の収支シミュレーションでわかることを紹介しましたが、不動産投資を始める際に多忙な医師が自身で収支シミュレーションを行うことは容易ではありません。
実際には、不動産業者が事前に用意した収支シミュレーションを見て判断することになることがほとんどです。
しかし、不動産業者が事前に用意した収支シミュレーションの数字を100%信用することは危険です。
不動産業者は買主だけでなく自社の利益も追求しなくてはならない側面もあるため、買主にとって都合の良い現実的ではないシミュレーションを提示している可能性があります。
適用金利や各種税金など、シミュレーションに使用する数値の多くは固定値ですが、一部の前提条件には設定者の判断が反映されるため、下記の5つの点は注意して確認すべきです。
- 空室率
- 家賃下落率
- 管理費・修繕積立金
- 想定売却価格
- サブリース契約の有無
空室率
不動産投資の収支シミュレーションにおける注意点として、空室率が甘く見積もられている可能性が挙げられます。
満室想定でシミュレーションされている場合も少なくなく、一見すると安定した家賃収入が得られるように勘違いしてしまいますが、実際にずっと満室であることなどあり得ません。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の報告によれば単身者の平均居住期間(全国)は3年3ヶ月であり、入居者の転勤や転居などを理由に、所有期間中に一時的に空室が発生する可能性は高いです。
また令和5年の住宅・土地統計調査では、エリアによって空き家率にかなりのばらつきを認めます。
そのため、収支シミュレーションでは満室を前提とするのではなく、物件の立地や築年数、周辺の賃貸需要などを踏まえて、一定の空室期間を想定しておくことが重要です。
家賃下落率
不動産投資の収支シミュレーションにおける注意点として、家賃下落率が反映されていない可能性があります。
さまざまな要因によって生じる周辺相場の変化とともに、家賃は上がることもあれば下がることもあるため、一定賃料で行われたシミュレーションには注意が必要です。
日本不動産研究所の報告によれば、2021年以前までは家賃は横ばい、もしくは下落する物件がほとんどで、増加する物件は非常に少数でした。
ここ数年は物価高や賃貸需要の増加などを背景に家賃が増加する割合が増えていますが、特に地方では家賃が下落するエリアもいまだにあります。
シミュレーションでは悪いシナリオを想定しておいた方が良いため、保守的なシナリオとして、一定の家賃下落率を設定してシミュレーションすることも重要です。
管理費・修繕積立金
不動産投資の収支シミュレーションにおいて近年特に注意すべき点が、管理費・修繕積立金の増額です。
多くのマンションは修繕積立金を「段階増額積立方式」(段階的に修繕積立金を増額して徴収する方法)で徴収しているため、物件を長期間所有する中で修繕積立金の増額が見込まれます。
また近年は資材価格や人件費の上昇を背景として、管理費・修繕積立金の見直しが必要となる場合があります。
仮に増額された場合は月々のキャッシュフロー悪化、売却価格の低下にもつながるため、一定の金額でシミュレーションが行われている場合は注意が必要です。
想定売却価格
想定される売却価格が高めに設定されているシミュレーションもあるため、注意が必要です。
通常、建物が経年劣化することで時間の経過とともに物件の価値は下がっていきます。
一方で、インフレや家賃上昇など、さまざまな要因で物件価格が上がることもあります。(実際にここ数年は、主に都心部で不動産価格が上昇しています)
そのため、購入時点で数年後の売却価格を正確に予測することは困難ですが、少なくとも周辺の類似中古物件の相場をベースに、保守的な売却価格を設定した方が良いでしょう。
サブリース契約の有無
サブリース契約の場合、収支シミュレーションからは読み取れないさまざまなコストを支払う必要がある可能性もあるため、注意が必要です。
サブリース契約とは不動産会社(サブリース業者)がオーナーから賃貸物件を一括で借り上げ、第三者へ転貸(又貸し)する仕組みです。
空室の有無に関わらずサブリース業者から一定割合の家賃が得られるため、収支シミュレーションにおける家賃変動リスクを抑えられると思う方も少なくないでしょう。
しかし、実際には下記のようなリスクを伴います。
- 途中で賃料を減額される可能性がある
- サブリース契約解除の違約金が高額である
途中で賃料を減額されればキャッシュフローは悪化し、契約解除の際には違約金が発生する場合があります。
まとまった違約金が発生すると、数ヶ月分の家賃収入に相当する負担となる場合があり、投資収支に大きな影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
収支シミュレーションの見栄えがどんなに良くても、自身の契約がサブリースであるかどうかは必ず事前に確認しておくべきでしょう。
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本業の収入が収支シミュレーションに与える影響
ここまで収支シミュレーションにおいて確認すべき注意点を解説しましたが、実はこれらの注意点と同じくらい注意しなくてはならないことが、不動産投資を始めた後のご本人の年収です。
購入以降も年収の上昇が期待できるのであれば特に問題はなく、むしろ所得税率が上がることで節税効果が高まる可能性があります。
一方で、転勤や転科、妊娠・出産、育児などのライフステージの変化や勤務形態の変更などによって年収が減少する可能性が見込まれる場合、下記のような悪影響を及ぼします。
- 金利上昇や空室増加、修繕費高騰などのリスクを許容できなくなる
- 期待していた節税効果を得られなくなる
- ローンの借り換えが困難となる
事前のシミュレーション上では許容できていたリスクであっても、実際に年収が下がるとこれらのリスクは許容しがたく感じるようになるため、注意が必要です。
また、金利上昇などの理由でローンを他行に借り換える際も、年収が低下すると、以前と同等またはより良い条件で融資を受けることが難しくなる可能性があります。
特に医師の場合、主たる勤務先が医局人事で変わったり、高額なバイト代を出してくれる非常勤としての勤務先が変わる可能性があり、事前に予測できない形で年収が大きく変化する可能性があるため、注意が必要です。
不動産投資のシミュレーションを行うと同時に、自身のキャリアにおいて適切な投資時期かも含めて判断する方が良いでしょう。
まとめ:自分で数字を確認して安定した不動産投資を目指そう
この記事では不動産投資における収支シミュレーションでわかることや収支シミュレーションの信用性、注意点や確認すべき数字などについて解説しました。
購入前に収支シミュレーションを行うことで物件の収益性やリスク許容度、理想的な売却のタイミングなど、投資価値を判断する上でさまざまな有益な情報を得ることができます。
一方で、常に満室想定、家賃や管理費・修繕積立金・金利が一定で収支シミュレーションが行われている場合、その結果は現実と乖離する結果になりかねないため、注意が必要です。
提示された数字を鵜呑みにするのではなく、さまざまなリスクは起こり得るものと考えていくつものパターンでシミュレーションすることが、安定した不動産投資を目指すためには重要です。
なお、多忙な医師の方の中にはシミュレーションに時間や労力を費やしたくない、という方も少なくないでしょう。
下記の記事では、シミュレーションの妥当性を第三者に確認してもらう方法についても紹介しているため、合わせてご一読いただけると幸いです。
★ここに「医師向け不動産投資のセカンドオピニオン|契約前に物件を第三者へ相談するメリット」記事リンク

