不動産を売却した医師の中には、売却にかかる税金を計算できず、お困りの方も少なくないでしょう。不動産売却にはさまざまな税金が発生し、比較的高額な物件を扱う傾向にある医者は支払う税金も多くなるため、注意が必要です。
不適切な申告をしてしまったり、受けられる控除を逃してしまう可能性もあるため、売却を検討される方や実際に売却した医師の方は、制度や計算方法を正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、医師の不動産売却にかかる税金の概要や計算方法、税負担を軽減する方法など詳しく解説します。この記事を読むことで、売却に伴う税金を把握でき、最大限節税することができるため、ぜひご一読ください。
1. 医師の不動産売却にかかる税金の全体像
不動産売却にかかる税金の全体像を把握するために、まずは支払うべき4つの税金を把握しておきましょう。
- 印紙税:売買契約時に支払う
- 登録免許税:決済時に支払う
- 譲渡所得税:翌年の確定申告時に支払う
- 消費税:翌年の確定申告時に支払う
実際に売却された医師の方であれば、すでに印紙税や登録免許税を支払っているため、残りの譲渡所得税と消費税を翌年の確定申告で支払う必要があります。
なお、これらの税金は基本的に売却した物件の固定資産評価額や売却金額に比例して高くなるため、比較的高額な物件を購入する傾向にある医師は注意が必要です。
特に、譲渡所得税と消費税は、印紙税や登録免許税と比較して支払う金額が高額になることがほとんどで、場合によっては数百万円必要となるため、実際にどれくらいの金額になるか、事前に把握しておく必要があります。
なお、印紙税や登録免許税の金額については下記の記事で詳しく解説しているため、ぜひご一読ください。
リンク:不動産売却の仲介手数料の相場は? 計算方法や値引き交渉についても解説
2. 譲渡所得の基本計算式
不動産売却に伴って生じる譲渡所得の基本計算式は下記のとおりです。
課税譲渡所得金額=収入金額−(取得費+譲渡費用)− 特別控除額
収入金額とは買主から受け取る金額、取得費とは土地建物の購入代金から減価償却費を差し引いた金額を指し、譲渡費用に算定可能な項目は下記の通りです。
- 売却における仲介手数料
- 印紙税
- 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
- 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
- 既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金
- 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など
医師が投資用の区分マンションを売却する場合、上記のうち主に仲介手数料や印紙税が譲渡費用として算定できます。
つまり、売却時に発生する仲介手数料や印紙税は最終的に経費として計上できるため、一時的には支払う必要がありますが、確定申告においては課税譲渡所得金額を引き下げ、節税効果が期待されます。
次に、特別控除額とは主に下記のようなものが挙げられます。
- 公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例
- マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
- 特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
- 特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例
- 平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例
- 農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例
- 低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除の特例
これを見るとわかる通り、医師が投資用の区分マンションを売却する場合、特別控除額が適用できるのは行政・公共事業が絡む特殊ケースのみであり、基本的には適用できません。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の違い
上記計算式で確定した課税譲渡所得金額に対して、不動産の所有期間に応じて下表のような異なる税率の譲渡所得税・住民税・復興特別所得税が生じます。
| 所有期間 | 譲渡所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計税率 | |
| 長期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日に所有期間が5年超 | 15% | 5% | 基準所得税額の2.1%(15%×2.1%=0.315%) | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日に所有期間が5年以下 | 30% | 9% | 基準所得税額の2.1%(30%×2.1%=0.63%) | 39.63% |
【参考】土地や建物を売ったとき|国税庁
これを見るとわかる通り、所有期間が支払う税金に与える影響は大変大きく、特に高額な物件を売買する可能性の高い医師の場合、長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率の差は無視できない差額を生み出すでしょう。
仮に譲渡所得が1,000万円得られたとしても、長期譲渡所得と短期譲渡所得とで支払う税金はなんと約200万円もの差が出ることになります。
一方で、令和5年に実施された医療経済実態調査によれば、医師の平均給与所得は1,267万円であり、この場合の所得税率は33%、復興特別所得税0.693%(所得税率33%×2.1%で算出)、住民税率10%、合計税率はなんと43.693%に達します。
給与所得が累進課税であること(最大の合計税率は55.945%)、経費を計上できないことを踏まえると、高年収な医師ほど不動産の長期譲渡所得の税率は優しく感じるのではないでしょうか。
消費税を払うべき医師とは?
ここまで不動産売却における譲渡所得税について解説しましたが、一定の要件を満たす売主の場合、消費税の支払い義務も生じます。
そもそも消費税とは、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者(購入者)が負担し、事業者(販売者)が納付します。
不動産売却においては、買主が消費税を含めた物件価格で購入し、売主がその消費税を預かり、最終的に確定申告で納付する流れです。
ただし、消費税の納付義務が生じるのは売主が下記の3つの条件を全てを満たす場合に限ります。
- 売主が課税事業者であること
- 売却するのが「建物」であること(土地のみの売却の場合は非課税)
- マイホーム以外の利用目的であること(投資用・事業用など)
ここでの課税事業者とは、下記のとおりです。
- 法人:前々事業年度の課税売上高が1,000万円超、もしくは前事業年度開始の日以後6か月の課税売上高が1,000万円超
- 個人事業主:前々年の課税売上高が1,000万円超、もしくは前年の前半6ヶ月の課税売上高が1,000万円超
- 売上高に関わらずインボイス登録済みの方
課税売上高とは売却した不動産の建物部分の売却金額を指し、上記のいずれかの条件を満たす場合、消費税の納付義務が生じます。
例えば、2024年に投資用マンションを売却して、建物部分の売却金額が1,000万円を超える場合、2026年には課税事業者となるため、2026年にさらに他の投資用マンションを売却すると消費税を納付する必要があります。
なお、譲渡所得税はあくまで売却によって得た利益に対する課税ですが、消費税は売却した建物部分自体に課税されるため、利益を得られていなくても支払う必要があり、利益の有無に関わらない点は注意が必要です。

3. 医師も活用できる特例・控除で税負担を軽減
不動産投資に成功して利益を得られても、支払う税金は少なくないため、少しでも税負担を軽減したいと考える医師の方も少なくないでしょう。
結論から言えば、税負担を軽減するための特例・控除は投資用マンションの売却においてはほとんど適用できません。
不動産売却時によく用いられる特例・控除の代表例として、3,000万円特別控除や買換え特例などが挙げられますが、全てマイホームの売却のみに適用されるため、投資用マンションの売却には利用できません。
そのため、医師が投資用マンションの売却で税負担を最小化するためには、下記の3点を強く意識することが重要です。
- 長期譲渡所得の軽減税率を活かす
- 譲渡費用を漏れなく算定する
- 課税事業者を避けて売却する
医師は比較的所得が高く、その分高額納税者であるため、上記の点に注意し、不動産売却に伴う税金を少しでも節税できるようにしましょう。
長期譲渡所得の軽減税率を活かす
投資用マンションの売却で税負担を最小化するためにも、長期譲渡所得の軽減税率を活かしましょう。
先述したように、譲渡した年の1月1日に所有期間が5年を超えているかどうか(※)で、譲渡所得に課せられる税率が異なるため、なんらかの事情がない限りは長期譲渡所得が適用されるまで売却を勧めません。
短期譲渡所得であれば合計税率は39.62%であるのに対し、長期譲渡所得であれば20.315%となんと20%近くも差が生じます。
そもそも投資用マンションの売買にかかる手数料や各種税金を上回る利益を得るためには時間がかかるため、何らかの理由がない限りは5年以上保有してから売却を検討すべきです。
(※)取得日から5年間、ではないため注意しましょう。
譲渡費用を漏れなく算定する
投資用マンションの売却で税負担を最小化するためにも、譲渡費用を漏れなく算定しましょう。
投資用マンションの売却では適用となる控除・特例が限られていますが、譲渡においてかかった経費は収入から差し引けるため、税負担を軽減する効果が期待できます。
例えば、譲渡費用に算定可能な仲介手数料は、「売買価格×3%+6万円+消費税」(※売買価格が400万円超の場合)で計算されるため、3,000万円で売れた場合、1,056,000円となります。
これを経費として計上しない場合、長期譲渡所得であっても1,056,000円×20.315%=約21万円、短期譲渡所得であれば1,056,000円×39.63%=約42万円も支払う税金が変わってしまうため、算定漏れには注意が必要です。
医師としての本業がどんなに多忙であっても、譲渡費用の算定が漏れると支払う税金に大きな差額が生じるため、譲渡費用に算定できる仲介手数料・印紙税・登録免許税は必ず忘れずに算定しましょう。
課税事業者を避けて売却する
投資用マンションの売却で税負担を最小化するためにも、課税事業者になることを避けて売却しましょう。
課税事業者になると、建物部分の売却価格に対して10%の消費税を支払う必要があるため、売却する時期に自身が課税事業者に当てはまらないか必ず確認することが重要です。
注意すべき点としては、前々年、もしくは前年の前半6ヶ月に1,000万円以上の建物部分の売却金額を得ているかどうかです。
この条件に該当している場合、その年での売却は避けることで消費税の支払いを回避でき、大幅な税負担の軽減を目指せます。
4. 医師が正確に計算し、適切に申告するためのポイント
不動産売却を医師が正確に計算し、適切に申告するためのポイントは下記の6つです。
- 取得費や譲渡費用を正確に把握する
- 取得費から減価償却費を差し引いて計算する
- 課税事業者、もしくはインボイス登録の有無を確認する
- 適用できる特例・控除がないか確認する
- 適用される税率を確認する
- 適切な時期に所得税・消費税の申告を行う
特に、取得費や譲渡費用の計算漏れや課税事業者となる場合、もしくは長期譲渡所得が適用されない場合は、支払う税金に数百万円の差が出る可能性があるため、注意が必要です。
一方で、これらのポイントを全て事前にチェックし、自身で適切に申告するのは、多忙な医師にとっては非常にハードルが高く、不適切な申告をしてしまう可能性もあります。
そのため、不動産売却における税金の計算は税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
まとめ:不動産売却にかかる税金を計算し、資金に余裕を持って申告を
この記事では、不動産売却にかかる税金の概要や計算方法、損しないためのポイントを解説しました。
不動産売却にかかる税金の中でも譲渡所得税と消費税はボリュームが大きく、計算ミスや売却のタイミング次第では数百万円も税負担が変わってしまう可能性があります。
給与所得に対する所得税・住民税に加えて、不動産売却の所得税・住民税・消費税を同時期に支払う必要があるため、ただでさえ高額な納税が求められる医者の場合、十分な資金を用意しておく必要があります。
この記事を参考に、支払うべき税金を事前にシミュレーションし、余裕を持って申告できるように準備しておきましょう。
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