不動産投資を加速させたい方や、開業初期で無担保ローンの融資が下りにくい医師にとって、良い選択肢となるのが不動産担保ローンです。すでに所有している不動産を担保にすることで、比較的低金利で高額の融資を受けられます。
一方で、無計画に融資を組んでしまうと月々の返済が困難になったり、最悪の場合、担保にしてる不動産を失う可能性もあるため、注意が必要です。この記事では、医師が知っておくべき不動産担保ローンの概要や仕組み、活用法や注意点を詳しく解説します。この記事を読むことで、リスクを回避しつつ上手に不動産担保ローンを活用できるようになるため、ぜひご一読ください。
1. 医師が知っておきたい不動産担保ローンの基本
不動産担保ローンとは、その名の通り所有している土地や建物などの不動産を担保に、銀行などの金融機関からお金を借りること、あるいはそのサービスの名称です。
不動産を担保にするため、金融機関に対する返済が滞ってしまった場合、不動産を売却してローンの残債を返済する必要があります。つまり、仮に医師が不動産担保ローンを活用して融資を受ける場合、担保に入れるための不動産を何らか所有している必要があります。
不動産担保ローンにおいて担保にできる不動産は主に下記のとおりです。
| 土地 | 建物 |
| 宅地田畑山林牧場原野墓地池沼など | 居宅店舗事務所旅館料理店倉庫車庫など |
上記のうち、法人、自分自身、共同経営者または親族が所有し、担保にする許可を得た不動産のみ、担保にすることができます。また、あくまで金融機関が資産価値があると評価した不動産のみ担保にできるため、評価の低いものは場合によって担保にできない可能性がある点には注意が必要です。
不動産担保ローンと通常のローンの違いは?
住宅ローンはマイホーム購入、自動車ローンはマイカーやバイクの購入と使い道が決まっています。一方で、不動産担保ローンや通常の無担保ローン(カードローンやフリーローンなど)はどちらも使い道は原則自由です。しかし、両者には下表のような違いがあります。
| 不動産担保ローン | 通常の無担保ローン | |
| 担保 | 不動産 | なし |
| 金利 | 比較的低金利 | 比較的高金利 |
| 借入可能額 | 高額可(数千万円〜) | 少額(数十〜数百万円) |
| 審査 | 主に不動産価値で評価 | 主に返済能力で評価 |
| 返済期間 | 長期(20〜35年) | 短〜中期(1〜10年) |
| 使用用途 | 原則自由 | 原則自由 |
| 返済不能時 | 不動産を失う | 信用情報が悪化する |
これを見ると分かるとおり、不動産担保ローンは不動産を担保に入れる分、通常の無担保ローンよりも低金利、長期間、高額と、より好条件での融資を受けられます。一方で、返済が不可能な場合は不動産を失うリスクがあるため、通常の無担保ローンよりハイリスクです。
医師の立場で理解する不動産担保ローンの仕組みと特徴
不動産担保ローンを組む場合の仕組みは下記の5ステップです。
- 担保となる不動産を銀行が評価する
- 「掛け目」から融資額が決定する
- 抵当権を設定する
- 融資における金利や期間、返済方式などを設定する
- 出口条項を設定する
まず、銀行は担保となる不動産を評価しますが、実際の融資額は評価額に対して「掛け目」を掛けて算出します。「掛け目」とは、金融機関が安全のためにかける割引率のことで、不動産の立地や流動性、抵当順位などによって異なります。
不動産の立地が悪い場合や、流動性の低い事業用の不動産の場合、担保となる不動産は売却しにくいため、掛け目が低めに設定される仕組みです。例えば、評価額自体は1億円の物件であっても、掛け目が50%の場合、融資の上限は5,000万円になります。次に、掛け目に大きく影響する抵当順位については下例で解説します。
例)
・投資用不動産評価額:6,000万円
・A銀行からの投資用ローン残債:3,000万円
・B銀行からの不動産担保ローン残債:2,000万円
A銀行が1番抵当権、B銀行が2番抵当権の場合、投資用不動産評価額6,000万円のうち、まずはA銀行の残債3,000万円が優先して返済されるため、残りは3,000万円です。
この残金3,000万円がB銀行の残債2,000万円の返済に充当されるため、不動産評価額が1,000万円以上下落した場合、2番抵当権を持つB銀行は残債を回収しきれないリスクを背負います。
逆にB銀行が1番抵当権の場合、最初に投資用不動産評価額6,000万円を不動産担保ローン残債2,000万円に充当できるため、B銀行にとってはリスクが低く、掛け目は高めに設定される可能性が高いです。つまり、抵当順位が低い金融機関はローンを回収しきれないリスクを背負うため、掛け値が低く設定されます。
その他に、金利や融資期間、返済方式などを設定した上で、不動産担保ローン最大の特徴は契約時点、あるいはそれ以前に出口戦略を明確に設定する点です。
いつまでに、どのようにローンを返済するのか、事業計画書とともに金融機関に提出する必要があり、その内容の論理が破綻していると評価された場合、融資が成立しない可能性があります。
2. 医師としての不動産担保ローン活用メリットとリスク
医師としての不動産担保ローンのメリットは主に下記の3つです。
- 比較的低金利で長期間、高額な融資を受けられる
- 使用用途は原則自由である
- 安定した勤務医以外の医師でも高額な融資を受けられる
先述したように、不動産担保ローンは使用用途を問わず、通常の無担保ローンと比べて低金利・長期間・高額な融資が受けられるため、新規物件の購入や新規事業の資金集めにはおすすめです。
また、通常のローンでは借主の収入や勤務先を含めた返済能力を評価するのに対して、不動産担保ローンはあくまで担保にする不動産の価値が重視されます。そのため、下記のように収入が不安定になりやすい医師でも高額の融資を受けることができます。
- 非常勤やスポット勤務が多い
- 開業直後
- 法人が赤字である
一方で、下記のようなリスクを伴うため、注意が必要です。
- 担保にした不動産を失う可能性がある
- 通常のローンよりも審査や融資までに時間がかかる
- 抵当権設定登記費用や司法書士報酬など諸費用がかかる
- 担保にしている不動産価格が下落すると担保割れする
多額の融資を引くために自宅やクリニック用不動産を担保にすると、最悪の場合自宅も職場も失うため、これらを担保に入れるのは最終手段と考えた方が良いでしょう。また、不動産の評価や出口の設定に時間がかかるため、通常のローンよりも融資にスピード感がなく、急いで資金調達したい方には不向きです。
最も注意したい点は、担保にしている不動産価格が下落して担保割れする場合です。
何らかの原因で不動産価格が下落した場合、仮に担保にしている不動産を売却しても不動産担保ローンの残債を返済しきれず、差額を自己資金で補うことになります。

3. 医師が注意すべき融資のポイント
特に医師が不動産担保ローンを組む場合、下記の3点には注意が必要です。
- 年収や医師免許は大きなプラス材料にならない
- 所有している不動産の評価額と実際の融資額は異なる
- 自身にとって不利な条件で出口を設定してしまう
一般的な住宅ローンなどであれば、返済能力が金融機関の評価につながるため、高収入で雇用が安定的な医師は大変有利です。一方で、不動産担保ローンはあくまで担保にする不動産の資産性が評価されるため、必ずしも「収入や属性が高い医師は有利な融資を受けられる」というわけではありません。また、仮に資産性の高い不動産を所有している医師でも、実際の融資額はあくまで金融機関の評価額と掛け目次第で決まるため、評価額通りに融資を受けられると勘違いしないよう注意しましょう。
最後に、最も医師が注意すべきは出口戦略です。
出口戦略を誤れば医師でも自己破産のリスクが
不動産担保ローンが通常のローンと異なる点は、契約時点、あるいはそれ以前に出口戦略が明確に設定されてしまう点です。
医師の場合、「収入や属性が高いから有利な融資を受けられる」と誤った認識を持ち、出口戦略の設定を金融機関側に有利に設定されてしまうことがあります。最悪の場合、良い出口を作れず自己破産のリスクもあるため、下記の4点は必ず確認しましょう。
- 金利タイプ(変動or固定)や返済方式(元利金等or元金均等)
- メガバンク・信金・ノンバンクによる条件の違い(融資額や金利・掛け目など)
- 期限一括返済条項
- 追加担保・財務制限条項
例えば、変動金利で元利金等(毎月の返済額が固定)の場合、金利上昇局面では月々の金利負担額が高騰し、元金部分が減らなくなるため、出口を作りづらくなります。(逆に元金均等ではキャッシュフローが悪化)
また、一般的にメガバンクは低金利で高掛け目であり、出口を作りやすい一方で、審査が厳しく融資までに時間がかかる点が欠点です。(ノンバンクはその逆で出口が作りにくく、信金はノンバンクと銀行の中間)
そして最も重要な点は、期限一括返済条項の有無です。
期限一括返済条項とは、「契約で定めた期限が来たら、残っている元本を一括で返済しなければならない」という条項であり、これが設定されている場合、現金での一括返済しか手段がなくなります。つまり、他の金融機関への借り換えができなくなる、もしくは担保にしている不動産の価格が下落している場合は返済できない可能性があり、余程の現金を持っていない限り、出口が自己破産以外に無くなってしまうのです。他にも、追加担保や財務制限条項が設定されている場合は注意が必要です。
追加担保とは、「担保にしている不動産の価値が不足したと金融機関が判断した場合、別の不動産や資産を追加で担保に入れるように求められる仕組み」で、契約内容によっては自宅まで対象となるケースもあります。
財務制限条項とは、「一定の財務状態を維持しなければ、一括返済を求められるという契約条項」であり、具体的な項目としては返済余力や借入残高/評価額を評価され、事前に設定した数値を下回れば一括返済を求められます。いかに高年収な医師であっても、事前に設定した契約であるため、容赦無く実行されます。
強制的にローン一括返済を求められ、支払えない場合は自宅を失ったり、自己破産してしまうため、ローンを組む段階で実現可能な出口を作れるような契約を設定することが重要です。
4. ローンをうまく活用した不動産投資を
ここまで不動産担保ローンの注意点などに触れ、怖い印象を抱かれた方も少なくないでしょう。しかし、国際的にまだまだ低金利な日本において、高額な不動産を購入するためにローンを活用することは非常に合理的です。うまく活用すれば不動産投資を加速でき、「お金を借りながら資産を増やす」ことができるため、無理のない返済計画を立て、投資戦略に組み込むことが重要です。
返済計画と投資戦略に組み込む
では、実際に医師が不動産担保ローンをうまく活用するためには、どのように活用すべきなのでしょうか。
多くの場合、下記の3つのケースで活用されます。
- さらに新規物件を買うために、既存の投資用不動産を担保にする
- これからマイホーム購入予定だが、住宅ローンの枠を毀損せずに融資を受ける
- 開業当初、もしくは法人が赤字決算で他のローンで融資が降りにくい
医師に最も多いケースは、新規物件の購入(不動産投資の加速)時、頭金や諸費用を支払うために既存物件を担保にするケースです。他にも、今後住宅ローンを組む予定の医師が融資を受けたい場合、無担保ローンだと住宅ローンの審査に影響するため、影響の少ない不動産担保ローンを優先して組むことも良い戦略です。
また、開業医の場合は開業初期は経営が軌道に乗らず、軌道に乗っても設備投資などで赤字決算になると、他のローンで融資が下りにくくなります。
不動産担保ローンであれば、価値ある不動産さえ持っていれば融資を受けられるため、開業や設備投資のつなぎで融資を受ける方も多いです。
どのケースでも、自身の投資戦略にうまく融資を組み込むことで資産増加を目指せる一方、金利上昇や不動産価格の下落など、状況が大きく悪化するリスクも抱えているため、余裕のある返済計画と出口戦略を設定することが重要です。
専門家と連携して安心・安全に活用
余裕のある返済計画や安全な出口戦略を立てるためには、不動産担保ローンに関わる知識を身につけることはもちろん、自身の収入や支出、人生設計も含めて総合的に評価する必要があります。
しかし、多くの医師は本業が多忙で十分な知識を得られず、また高年収であるという油断から、十分な計画を立てずに契約してしまう可能性もあります。そこで、税理士や司法書士、不動産仲介人など、さまざまな知見を持った専門家と連携して、複合的な目線から慎重に判断を下すことが安心・安全に活用するためには必要不可欠です。
自身の資産を守るためにも、必ず相談・連携して融資を組みましょう。
まとめ:高年収の医師こそ不動産担保ローンはリスク管理の徹底を
この記事では、不動産担保ローンの概要や仕組み、活用法や注意点について詳しく解説しました。
不動産担保ローンは、無担保ローンと比べて比較的低金利に高額の融資を受けられるため、これから新たな不動産を購入する場合や、開業初期・法人赤字の医師にとってはおすすめです。一方で、期限一括返済条項や追加担保・財務制限条項などが規定されている場合は担保にしている不動産を失う可能性があります。また、金利の急激な上昇、不動産価格の大幅な下落によって借入を返済しきれなくなり、自己破産する可能性もあります。
医師で高年収だからといって油断せず、不動産担保ローンを活用する場合は余裕のある返済計画と出口戦略を設定し、リスク管理を徹底することが重要です。
医師専門の節税アシスタントが
あなたをマンツーマンでサポートします!!

