非常勤の医師でも不動産投資はできる?収入の不安定さに備える資産形成と融資・審査のポイント

「非常勤の医師として働いている。今は困っていないけれど、将来の収入が不安定になったらどうしよう」

そんな不安から、医師としての信用力を活かして不動産投資(家賃収入)を検討する方が増えています。

一方で、非常勤は働き方の自由度が高い反面、収入の見え方が常勤と異なるため、融資や審査で不安を感じやすいのも事実です。

本記事では、非常勤の医師が不動産投資を考えるときに押さえておきたい「考え方」と「論点整理」を、都心エリアを前提にまとめます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて金融機関・税理士等の専門家にご相談ください。

目次

1.「医師=高収入」の裏にある、働き方改革と非常勤のリアル

「医師は高収入で安泰な職業である」

世間一般ではそう思われていますし、統計データ上もある程度は事実です。

厚生労働省のデータをもとにした集計では、30代前半の医師の平均年収は約970万円、30代後半では約1,420万円とされています。数字だけを見れば、確かに十分に高い水準です。

しかし、「この水準がいつまで続くのか」という現場の医師が抱える肌感覚の不安は、平均年収の数字からは見えてきません。

参考:厚生労働省|令和4年賃金構造基本統計調査

1-1.働き方改革で見え始めた「収入の頭打ち」リスク

医師の高収入は、これまで過酷な長時間労働によって支えられてきた側面があります。

厚労省の資料では、診療科によっては週60時間以上働く医師が半数前後に上るという実態も報告されています。

こうした背景から2024年に本格始動した「医師の働き方改革」。

労働環境の改善につながる一方で、医師にとっては「これまで当直や時間外労働で支えていた収入が減るかもしれない」という切実な懸念材料でもあります。

実際に、ある医師向け転職サイトのアンケートでは、働き方改革によって収入が減ると思うと回答した医師が3〜4割に上るという結果もあります。

参考:厚生労働省|医師の勤務実態について

1-2.非常勤医師にこそ迫る「調整」の影響

この環境変化の影響を直接的に受けやすいのが、非常勤で働く医師です。

もともとシフト制で柔軟に働けるのがメリットですが、裏を返せば「病院側の都合で調整されやすい」ということでもあります。

  • 想定していたほどスポット勤務(当直など)が入らない
  • 病院の経営方針や働き方改革の影響で、非常勤枠そのものが削減される
  • 年ごとの収入見通しが立てにくくなる

このように、外部環境によって収入が左右される「ゆらぎ」のリスクは、今後ますます高まる可能性があります。

不動産投資を検討する際は、今の年収額だけで判断するのではなく「将来の収入が環境変化によって不確定」という前提を押さえておくことが重要です。

2.医師×非常勤×不動産投資は「将来不安の設計」から始める

医師は一般に社会的信用が高い職種と言われます。そのため「不動産投資のローンも通りやすいのでは」と期待して相談に来られる方も少なくありません。

しかし、実際の金融機関の目はシビアです。「非常勤(週2〜3日勤務など)」という働き方は、医師であっても「月ごとの収入変動」や「雇用の継続性」という観点で、常勤医とは異なる審査基準で見られる局面があるからです。

ここで大切なのは、いきなり物件探しを始めることではありません。

まずは、ご自身の将来に対する漠然とした不安(収入の揺れ、働き方の変化、家族イベントなど)を言語化し、それを埋めるために「副収入=もう一つの安定源」をどう設計するか、という順番で考えることです。

結論から申し上げれば、非常勤の医師であっても不動産投資を行い、家賃収入という資産を作ることは十分に可能です。

重要なのは、不利と捉えられがちな収入状況を金融機関に対してどう説明し、安定性を証明するかという「設計」にあります。

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3.医師としての信用力と“非常勤”のゆらぎを踏まえた資産づくり

一般的に「医師」は、金融機関にとって非常に属性の良い(融資したい)顧客です。しかし、「非常勤」という条件になると少し状況が変わります。

3-1.「医師=高属性」と「非常勤=不安定」の狭間

常勤医師の場合、毎月の給与が固定されており、ボーナスや退職金規定がある病院も多いため、金融機関は「長期的な収入の安定性」を高く評価します。

一方、非常勤医師(フリーランス医師)の場合、たとえ年収総額が常勤医と同等、あるいはそれ以上であったとしても、以下のような点が審査上の懸念点として見られることがあります。

  • 収入の変動: 勤務日数や当直回数によって月収がブレやすい。
  • 契約の継続性: 年度ごとの契約更新など、雇用の安定性が書類上読み取りにくい。
  • 勤務先の分散: 複数の医療機関から給与を得ているため、メインの収入源が特定しにくい。

3-2.「非常勤は不利」と決めつけない

だからといって「非常勤医師は不動産投資ができない(ローンが組めない)」と諦めるのは早計です。

重要なのは、不利と決めつけるのではなく「金融機関に対して、自身の収入の安定性をどう証明するか」という「見え方を整える」準備です。 複数の勤務先があっても、長期間継続して勤務している実績や確定申告による所得の証明など、材料を適切に揃えることで、金融機関の評価は大きく変わります。

4.非常勤医師が融資・審査で見られるポイント

不動産投資において、融資(ローン)の可否は生命線です。金融機関は医師という「資格」だけでなく、よりシビアに「返済能力の継続性」を見ています。

4-1.収入の継続性と安定性

金融機関が最も気にするのは「年収の高さ」よりも「その年収が今後も続くか」です。 

非常勤の場合、特定の病院での勤務歴が長いことや、契約が自動更新であることなどがプラス材料になります。逆に、スポット勤務(単発バイト)の割合が多いと、不安定とみなされるリスクがあります。

4-2.勤務先数と収入の内訳

勤務先が複数あることはリスク分散とも言えますが、ローン審査では「主たる収入源はどこか」が問われます。 メインとなる勤務先での収入が一定以上あり、サブの勤務先がそれを補完しているという構造が見えると、審査担当者への説得力が増します。

4-3.負債状況と資金計画

すでに住宅ローンや自動車ローン、奨学金の返済などがある場合、それらを含めた「返済比率」がチェックされます。非常勤の場合、審査金利(実際に借りる金利より高めに設定されるストレステスト用の金利)での返済比率計算が厳しめに見られる傾向があります。

4-4.確定申告の状況

給与所得者であっても、複数の病院から給与を得ている場合や、給与以外の所得が一定額ある場合は確定申告が必要です。 

特に「給与所得や退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人」などは、確定申告が必要になります。金融機関は、この確定申告書(直近2〜3期分)の内容を精査し、実際の可処分所得を確認します。

参考:国税庁|確定申告が必要な方

5.非常勤でも活かせる医師という強み

非常勤であっても、医師には他職種にはない強みがあります。ポイントは「強みの種類」を分けて理解することです。

強み1:社会的信用(属性)になりやすい

医師は一般に、職業としての信用が高いと評価される傾向があり、融資の入口で有利に働く場合があります。

強み2:本業が忙しくても“仕組み化”しやすい

不動産投資は、株式等と比べてゼロから学ぶことも多い一方で、管理会社・税理士など外部リソースを活用しやすい投資でもあります。
非常勤で時間が限られていても、やり方次第で「自分が動かなくても回る形」に近づけられます。

ただし忘れてはいけないのは、医師という肩書きが“万能の免罪符”ではないことです。
強みを活かすほど、過信のリスクも高まります。

6.非常勤ならではの収入の揺れを和らげる“もう一つの安定源”という考え方

非常勤の魅力は、働き方を柔軟に変えられることです。
しかし裏返すと、その自由度は「将来の収入が一定ではない」という不安につながります。

ここでのキーワードは「分散」です。
あなたの医師としての収入が不安定であるなら、収入源を一本にせず、もう一つの柱(副収入)を持つことで揺れを小さくできます。

6-1.将来の働き方が変わっても続く収入源

30代前半〜は、キャリアも生活も変数が多い時期です。

  • 専門領域の変更、大学人事・勤務先変更
  • 子育て・介護など家族イベント
  • 体調変化や働き方の見直し

こうした変化で稼働日数が減ったとしても、家賃収入のように労働時間と切り離れた収入源があれば、心理的な不安を軽くできます。

もちろん、家賃収入も万能ではありません。空室、家賃滞納、修繕、金利変動などのリスクはあります。
だからこそ、不動産投資を「儲かる手段」としてだけ捉えるのではなく、次のように位置づけると失敗を避けやすくなります。

6-2.副収入=“キャリア保険(選択肢を買う)”

不動産投資の価値は、収益最大化だけではありません。
非常勤医師にとっては「働き方を変える自由」を守る“キャリア保険”という見方が有効です。

  • 収入が不安定になり得る未来に備える
  • いざという時に、焦って条件の悪い働き方を選ばない
  • 長期でコツコツ資産形成する

この整理をしておくと、短期の利益や節税の話に振り回されにくくなります。

7.過信せずコツコツ資産を増やすために持っておきたい考え方

ここからは、医師(特に非常勤)に多い“つまずき”を先回りしておきます。
あなたの目的が「将来の不安を減らす資産形成」であるなら、次の3点は必ず押さえてください。

7-1.「節税になるから始める」は危険

不動産投資には損益通算など税務上の論点がありますが、節税だけを目的にすると判断を誤りやすくなります。
節税は結果として付随することがあっても、主目的は「無理なく持ち続けられるか」です。

7-2.都心投資は“買いやすい”が“借り過ぎやすい”

都心は需要があると言われる一方、物件価格も高く、ローン返済が重くなりやすいエリアです。 「医師なら借りられる」という理由で背伸びすると、収入が不安定な時に一気に苦しくなります。

都心前提のあなたが見るべきは、派手な利回りではなく次の要素です。

  • 空室になった時のダメージ(現実的に耐えられるか)
  • 修繕・更新費用を含めた長期の資金繰り
  • 管理体制(丸投げではなく“監督できる設計”)

7-3.「住宅ローン(フラット35)を投資に流用」は絶対に避ける

ここは注意が必要なポイントです。
住宅金融支援機構は【フラット35】について、投資用物件の取得には利用できない旨を注意喚起しています。

もし「住民票を動かせば大丈夫」などの誘い文句があった場合は、リスクが高いと考えてください。

参考:住宅金融支援機構|【フラット35】の不適正利用に巻き込まれないために

7-4.税務の基本:不動産所得は「総収入−必要経費」

不動産所得の計算は、原則として「総収入金額−必要経費」です。(国税庁)
また、給与所得者の確定申告の要否は条件によって変わります。たとえば国税庁は、一定の条件のもとで「給与以外の所得が20万円以下の場合は申告不要」といった整理を示しています。(国税庁)
ただし、個別事情(医療費控除、ふるさと納税、住民税申告など)で扱いが変わることがあるため、必ず最新情報を確認してください。

参考:国税庁|不動産収入を受け取ったとき  国税庁|給与所得者で確定申告が必要な人

8.非常勤医師向け不動産投資のはじめ方ロードマップ(小さく始めて大きく崩さない)

最後に、ここまでの内容を“行動に落とす手順”にします。
不動産投資の成功要因は、派手なテクニックよりも「順番」と「守り」です。

Step1:目的を一文で言えるようにする

(例)「非常勤で収入が不安定になっても、将来の不安を小さくする副収入源を作りたい」
目的が曖昧だと、節税や利回りの話に流されます。

Step2:収入の棚卸し(週2非常勤の“変動幅”を可視化)

  • 年間の収入のブレはどのくらいか
  • 勤務先は何か所で、固定枠はあるか
  • 生活固定費と、毎月の余力はどのくらいか

Step3:資金計画(安全余力を先に確保)

  • 生活防衛資金を確保したうえで、どこまで許容できるか
  • 借入(住宅ローン等)の状況を整理する

Step4:融資打診(“通るか”ではなく“どう見えるか”を確認)

金融機関の見立てを早めに聞き、改善点を把握する

Step5:物件検討(都心前提=管理と資金繰りを最重視)

管理会社の質、修繕想定、空室時の耐久力をチェックする

Step6:運用設計(管理を丸投げしない)

丸投げはOK。ただし“監督できる設計”を作る(数値の見方、報告頻度など)

Step7:税務・記帳(ルールを知って迷わない)

必要経費、申告要否、控除の扱いを整理する

参考:国税庁|不動産収入を受け取ったとき

相談前に用意すると話が早い情報(チェックリスト)

  • 非常勤の勤務形態(週2日、勤務先数)
  • 直近1〜2年の収入のイメージ(年単位で)
  • 他の借入(住宅ローンなど)と毎月返済額
  • 生活固定費(家計)と、手元資金の目安
  • 何が不安で副収入を作りたいのか(将来/収入/不安定 など)

9.よくある質問(FAQ)

Q1. 非常勤(週2)の医師でも不動産投資ローンは組めますか?

可能性はあります。ただし、医師という職業だけで決まるわけではなく、収入の継続性や他の借入、資金計画、物件の評価など総合的に見られます。非常勤の場合は「見え方の設計」がポイントです。

Q2. 審査では何を見られますか?

大枠は「返済可能性」です。収入の再現性、手元資金、負債状況、物件の収益性・管理体制などを総合して判断されます。

Q3. 確定申告は必要ですか?

給与所得者でも、給与以外の所得や控除の状況によって申告が必要になる場合があります。国税庁の案内を確認し、個別事情がある場合は税理士等に相談するのが安全です。

参考:国税庁|給与所得者で確定申告が必要な人

Q4. フラット35で投資用物件は買えますか?

【フラット35】は投資用物件の取得には利用できない旨が注意喚起されています。投資目的での利用を促す説明には十分注意してください。

参考:住宅金融支援機構|【フラット35】の不適正利用に巻き込まれないために

Q5. 都心で始める場合、何に注意すべきですか?

都心は物件価格が高くなりやすいため、借入依存になり過ぎないこと、空室や修繕を含めた長期の資金繰り、管理体制の質を重視することが重要です。

10.まとめ:将来の不安を小さくする「キャリア保険」としての不動産投資

非常勤の医師が不動産投資を検討する理由は、単なる資産運用ではなく「将来の不安」を小さくするためではないでしょうか。

医師という信用力は確かに大きな強みになりますが、非常勤ならではの収入のゆらぎがある以上、“医師だから大丈夫”と過信するのは禁物です。融資・審査での見え方を意識し、無理のない資金計画を整えることから始めてみましょう。

不動産投資は、うまくいけば副収入(家賃収入)として、将来働き方が変わってもあなたの生活を支える安定源になります。

一方で、空室や修繕、金利変動といったリスクもゼロではありません。一攫千金を狙うのではなく、あくまで「キャリア保険」としての位置づけで、コツコツと資産形成を進める視点を持つことが大切です。

もし、少しでも迷いや不安があるなら、まずは現状を客観的に整理することから始めてみませんか?

私たちは、投資を勧めること自体を目的にしていません。あなたの不安と現状を棚卸しし、融資や審査の論点、そして取り組むべき優先順位を整理する「判断材料」を整えることが、無料相談の目的です。

まずは、あなたのこれからのキャリアと資産について、フラットにお話ししましょう。

 

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11.この記事を書いた人

佐藤おさむ

診療放射線技師×ライター。 地域基幹病院・健診センターで20年の勤務経験。現在も臨床に携わりながら、医療分野に特化したライターとして活動。クリニックや企業サイトの医療記事、医師・開発者へのインタビューなど、医療業界に関わる幅広い執筆実績がある。

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