「不動産を持てば節税になる」
「インフレ時代には不動産投資が良い資産形成になる」
このような誘い文句で不動産投資を提案されている医師の方も少なくないでしょう。
確かにインフレ時代の資産形成において、不動産投資は1つの良い選択肢であり、物件によっては節税効果も期待できます。
しかし、物件選びや契約内容など、不動産投資のリスクを十分理解しないまま契約してしまうと、思ったようなリターンが得られないどころか損してしまう可能性もあるため、注意が必要です。
そこでこの記事では、不動産投資を提案された医師の方が契約前に確認すべきポイントを詳しく解説します。
不動産投資を提案された医師が契約前に確認すべき10のポイント
比較的年収の高い医師は税負担も大きく、新たな収入源の確保や節税目的で不動産投資を検討される方も少なくないでしょう。
一方で、本業が多忙であるため、十分な理解や確認をせずにそのまま不動産業者が紹介する物件を契約してしまうのは危険です。
特に、不動産投資を提案された医師は契約前に必ず下記の10個のポイントをチェックしましょう。
- 就業規則の確認
- 節税効果のカラクリ
- サブリース契約の有無
- 表面利回りと実質利回り
- 重要事項説明書の記載事項
- 適用金利と金利上昇リスク
- 管理会社の管理体制
- 周辺地域の空室率
- 売却時の出口戦略
- ライフステージの確認
1. 就業規則の確認
特に勤務医の場合、まず初めに自身の勤める医療機関の就業規則で不動産投資が制限されているかどうかを確認しましょう。
令和4年に厚生労働省は副業・兼業の促進に関するガイドラインを改訂し、基本的に副業を推奨する方向に舵を取りました。
一方で、本業に支障が出る場合や本業と競合する他社で働く場合、もしくは情報漏洩のリスクがある場合は主たる就業先の権限で副業を制限できます。
医師にとっての不動産投資は基本的に上記のようなケースに該当せず、副業というよりも資産運用の1つとみなされることが多いため、一般的には容認されることが多いです。
一方で、事業的規模になる場合や本業に大きな支障をきたす場合は罰則の可能性もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
2. 節税効果のカラクリ
不動産投資のメリットの1つとして節税効果を謳う業者も少なくありませんが、これは半分正解で半分嘘です。
節税効果のカラクリは減価償却費(建物や設備の価値の減少を会計上費用として計上するもの)にあり、確定申告時に家賃収入に対して減価償却費などを経費として計上することで見た目上の赤字を作り出し、給与所得と損益通算することで節税できます。
しかし、この減価償却費は不動産売却時に課税譲渡所得金額に含められ、下表のように所有期間に応じた税率で課税されます。
| 所有期間 | 譲渡所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計税率 | |
| 長期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日に所有期間が5年超 | 15% | 5% | 基準所得税額の2.1%(15%×2.1%=0.315%) | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日に所有期間が5年以下 | 30% | 9% | 基準所得税額の2.1%(30%×2.1%=0.63%) | 39.63% |
【参考】土地や建物を売ったとき|国税庁
つまり、最終的には課税されてしまうため、減価償却費による節税効果は税の繰延でしかないのです。
一方で、高年収の医師では所得税率が33%程度となるケースも多く、例え税の繰延であったとしても長期譲渡所得税率15%が適用されれば税負担を抑えられる可能性があります。
以上のことから、節税効果を得られるかどうかは毎年適用される所得税率や売却時の譲渡所得税率次第であることを知っておきましょう。
3. サブリース契約の有無
サブリース契約とは不動産会社(サブリース業者)がオーナーから賃貸物件を一括で借り上げ、第三者へ転貸(又貸し)する仕組みです。

【引用】サブリース契約の仕組みと失敗しないためのポイント|建美家
サブリース契約を締結すれば仮に空室になっても家賃を一定割合保証してくれるため、安定した収益が得られる一方、下記のような重大な落とし穴があります。
- 解約困難なケースが散見される
- 実際の賃料が上がっても保証賃料は上がらない、もしくは減額の可能性もある
- 売却時の資産価値が低く評価される場合がある
借地借家法では貸主側からの解約には正当な事由が必要であるとされており、仮に契約書に途中解約可能と記載があっても容易に解約はできません。
また、日本不動産研究所の報告では5年連続で全国平均の賃料は上昇していますが、サブリース契約ではサブリース業者からの保証賃料しか入金されないため、家賃上昇の波に乗れず、売却時の資産価値が低く評価される可能性があります。
サブリース自体が悪と言いたいわけではありませんが、リスクやデメリットを十分把握した上で契約するようにしましょう。
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4. 表面利回りと実質利回り
不動産投資において物件の収益性を評価する指標の1つとして利回りがあり、主に下記2つが用いられます。
- 表面利回り:満室時の年間家賃収入÷物件価格
- 実質利回り:(年間家賃収入-維持費)÷(物件価格+購入時諸費用)
当然利回りが高いほど収益性が高い傾向にあるため、つい物件選びで利回りに固執してしまう医師の方も少なくないでしょう。
しかし、いわゆる高利回り物件には下記のような落とし穴もあります。
- 表面利回りは高いが空室率も高い
- 表面利回りは高いが実質利回りは低い
表面利回りとはあくまで満室想定での年間家賃収入から算出され、空室率を無視した指標であり、実際には空室で家賃収入が得られない可能性があるため、注意が必要です。
また、いかに表面利回りが高くても修繕積立金や管理費が高額な場合、実質利回りは下がってしまいます。
「利回り10%以上!」などの謳い文句に流されず、なぜ利回りが高いのかを入念に分析することが重要です。
5. 重要事項説明書の記載事項
重要事項説明書とは、不動産の売買契約を結ぶ前に、宅地建物取引士が物件やお金の条件について詳しく説明するための書類です。
重要事項説明書の記載事項で特に注意すべき点を5つ挙げます。
- 登記された権利:登記名義人の確認や抵当権の確認
- 法令上の制限:建ぺい率や容積率、高さ制限、道路との関係など確認
- 災害リスク:水害や土砂崩れのリスクの確認
- 瑕疵担保責任:シロアリや騒音、事故物件など物件の抱える欠陥を確認
- 契約に関するお金の条件:手付金解除の期限や違約金、ローン特約の有無など
私自身、何度もこの書類の説明を受けてきましたが、事前にある程度の予備知識がないと注意すべきポイントが分からないため注意が必要です。
最近では事前に重要事項説明書をAIに読み込ませ、買主側にとっての注意点を抽出することである程度事前にリスクを把握できます。
6. 適用金利と金利上昇リスク
不動産契約前に、必ず融資を受ける金融機関の適用金利を確認し、金利上昇リスクを把握しておきましょう。
これまで日本はデフレ不況への対策としてゼロ金利政策やマイナス金利政策などの超低金利を続けてきましたが、近年はインフレが進み、特に2024年以降は政策金利が急速に上昇傾向です。

【引用】時系列統計データ検索サイト|日本銀行(サイト内のグラフ編集により筆者がグラフを作成)
政策金利の上昇はそのまま住宅ローンの変動金利上昇につながり、以前のような低金利では融資を受けることができません。
現時点(2026年7月時点)では金利が高止まりしており、今後さらに金利が引き上げられれば月々の返済額も増加してしまうため、返済可能かどうか慎重に判断することが重要です。
7. 管理会社の管理体制
管理会社の管理体制も契約前に必ず確認しましょう。
特に本業が多忙な医師の場合、不動産の管理業務は管理会社に一任することが一般的であり、主に下記のような業務を委託します。
- 入居者管理:入居者の募集や契約、更新、退去時の手続き、家賃管理、トラブル対応など
- 建物管理:共用部の清掃やメンテナンス、設備の管理や大規模修繕など
- オーナー支援:リフォームやリノベの提案、収益改善のためのアドバイスなど
上記のような管理の質は、そのまま投資の勝敗に直結するため、必ず会社や担当者の実績は確認するようにしましょう。
実際に、私は過去に下記のような事例で担当者からアドバイスを受け、収益を上げることができました。
- 更新時や退去時に積極的に家賃増額を提案してくれる
- 修繕積立金が今後増額される可能性のある物件をリストアップしてくれる
- トラブル時に極力オーナーに損失が出ないよう対応してくれる
8. 周辺地域の空室率
不動産契約の前に必ず周辺地域の空室率も確認しておきましょう。
不動産投資における収益の源泉は入居者からの賃料であり、どんなに綺麗で立派なマンションであっても入居者がつかなければ投資として十分な成果は期待できません。
令和5年の住宅・土地統計調査では、賃貸住宅の空室率は17〜18%程度と概ね横ばいであるものの、エリアによってかなりのばらつきを認めます。
全国的に人口減少の進む日本では、今後はより購入する物件エリアを慎重に見定める必要があるでしょう。
9. 売却時の出口戦略
不動産投資の良い点は安定した家賃収入(インカムゲイン)を得つつ、売却益(キャピタルゲイン)も狙える点ですが、出口戦略に失敗すれば利益が失われてしまう可能性もあります。
そのため、契約前に必ず担当者に下記のような売却時の出口戦略について確認しておきましょう。
- 売却時期:5年以上所有する見通しかどうか
- 流動性:売ろうと思ってからどれくらいの期間で売れるのか
- 売却価格:物件の価値やエリアからどの程度の値上がりが期待できるか
- 手数料:売却時に生じる各種コスト(手数料や税金など)
購入前から売却時のことを明確にイメージすることは困難ですが、いつ・誰に・どれくらいの価格で売れるのかはある程度把握できるため、必ず事前に聞いておきましょう。
10. ライフステージの確認
不動産投資において非常に重要な点は、投資スタイルとライフステージが合っているかどうかです。
先述したように、区分マンション投資で高い節税効果を得るには、確定申告時に高い所得を維持できていることが重要です。
また、税率の観点から最低でも5年超所有される方が多いため、少なくとも契約後数年以内に収入が下がることが予想される医師には向いていません。
一方で、これから年収が上がる見込みであれば高い節税効果を得られるため、資産形成として良い選択肢の1つです。
契約前・契約時に医師が準備すべきものとは
医師が不動産を契約する際の流れは下記の6ステップです。
- 購入申し込み
- ローンの事前審査
- 売買契約締結
- ローンの本審査・団信加入
- 金銭消費貸借契約
- 決済・物件引渡し
ここでは、それぞれのステップで準備すべきものを紹介します。
購入申し込み
まず初めに購入したい物件が決まったら、購入申し込みのために買い付け申込書を売主側に提出します。
買い付け申込書は不動産会社から入手し、購入希望価格や購入希望日、支払い条件などを記入する書類です。
この際、本人確認書類や印鑑(主に実印)が必要となることがあるため、事前に準備しておきましょう。
なお、買い付け申込書の内容にあくまで法的拘束力はなく、提出後もキャンセルできます。
ローンの事前審査
次に、融資を受ける金融機関でローンの事前審査を受けます。
この際、年収や属性、勤続年数などが評価されて融資額が決まるため、本人確認書類、収入証明書類(源泉徴収票や確定申告書)、物件の概要資料などが必要です。
売買契約締結
ローンの事前審査を通過したら、重要事項説明を受けた上で売主との間で売買契約を締結します。
売買契約では、物件の価格、支払条件、引き渡し日、契約違反時のペナルティなどを定めた契約書を取り交わします。
またこの際、本人確認書類、実印、印鑑証明書、収入印紙、現金(手付金、仲介手数料など)が必要です。
金額によっては手付金など振込対応となるケースもあるため、事前に確認しておきましょう。
ローンの本審査・団信加入
売買契約締結後、金融機関に対するローンの本審査と同時に、保険会社の提供する団信(団体信用生命保険)に加入します。
ローンの本審査では事前審査よりも細かく書類提出を求められるため、住民票や印鑑証明書、収入証明書、他のローンの返済予定表など、各金融機関の求める書類一式を提出する必要があります。
また、団信に加入する場合は本人確認書類に加え、自身の健康状態を告知する告知書、場合によっては医療機関で実施した直近の健康診断書の提出が必要です。
金銭消費貸借契約
ローンの本審査を通過したら、融資を行う金融機関と「金銭消費貸借契約(金消契約)」を結びます。
これは借入金額や適用金利、返済期間などを確定させる重要な手続きです。
ここでも住民票や印鑑証明書、実印、本人確認書類など一式の提出が必要となります。
決済・物件引渡し
ここまで全ての契約が完了したら、司法書士の立ち会いのもと、事前に取り決めた引渡し日に物件の引渡し、残金の支払い、所有権移転登記などを実施します。
これらの手続きに関しては、金融機関や司法書士、不動産会社が事前の取り決め通りに各業務を実行するため、医師が自分で行うことは基本的に何もありません。
まとめ:医師ならではの強みを生かした不動産投資を
この記事では不動産投資を提案された医師が契約前に確認すべきポイントや準備すべきものについて解説しました。
いかに医師の本業が多忙であっても、十分な理解や知識のないまま、不動産会社の提案した物件を鵜呑みに購入するのは危険です。
物件の精査はもちろんのこと、自身のライフステージや就業環境が不動産投資に適しているかも含めて、総合的に判断する必要があります。
一方で、十分な知識を身につければ高収入・高属性の医師は不動産投資に向いているため、医師ならではの強みを生かした不動産投資を目指しましょう。
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この記事を書いた人
中山博介
関東の医療機関で10年以上勤務医として勤続する中で、株式投資はもちろんのこと、不動産や仮想通貨など様々な投資を行っています。
多忙な医師でも、経済的自由と労働からの解放を目指せるように、そして自分と家族が充実した人生を送れるように、安定した資産形成のためのノウハウを紹介しています。

